近視治療
近視について
近視になる仕組み
近視は眼軸が前後に伸びて、ピントが網膜に合わずにモノや字がぼやけて見える状態です。また、眼球の伸びは身体の成長と関連しており、成長期の頃に速く伸びる可能性があります。
小児の近視は増加しており、小学生の4割、中学生の6割、高校生の約7割が裸眼視力1.0未満と報告されております。その背景には、外遊び時間の減少、受験勉強やゲームなど近くを見る作業が増えたこと等、ライフスタイルの変化が原因と考えられています。
強度近視になると、緑内障や網膜剥離など目の病気になる可能性が高くなると言われています。
近視進行抑制治療の目的は、小児期にできるだけ近視が強くなるのを避けることで、日常生活の質の低下を防ぎ、目の病気になる可能性を低下させることです。
日常生活での近視抑制
- 近見作業時は正しい姿勢と適度な明るさを保ち、視距離を30cm以上とる
- 可能なら1日2時間以上、最低でも1日40分以上の屋外活動を
点眼薬による治療
リジュセア®ミニ点眼薬0.025%
令和7年4月に参天製薬(株)から国内販売開始となった0.025%低濃度アトロピン点眼薬です。薬効ターゲット想定部位である後部強膜への移行性を高め、虹彩・毛様体への移行性を抑制することで瞳孔への影響(まぶしさ)の軽減が図られています。
日本において5歳~15歳の近視患者を対象とした第Ⅱ/Ⅲ相プラセボ対照二重遮蔽比較試験を実施した結果、投与24ヵ月後における調節麻痺下他覚的等価球面度数の投与前からの変化量について、プラセボ群に対し優位性が検証されています。治療が長期におよぶことによる安全性も考慮した防腐剤を含まない一回使い切りタイプの点眼剤となっています。
治療法・効果
この薬は眼軸長が伸びるのを抑えることで近視の進行を抑制することが期待できます。
用法・用量
- 通常、1回1滴を1日1回就寝前に点眼します。必ず指示された使用方法に従ってください。
- 点眼し忘れた場合は、忘れた分は点眼せず、次の就寝前に1回1滴を1日1回点眼してください。指示がなければ1日に2回点眼してはいけません。
副作用や注意点
主な副作用として、羞明(まぶしく感じる)、霧視(かすんで見える)などが報告されています。これらの症状、その他にも何らかの異常が現れた場合には、医師にご相談ください。
治療開始前 |
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治療中 |
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薬代
- 1箱30日分
- 4,400円(税込)
※1回1滴、1日1回就寝前の点眼。
治療費用(税込)
- 初回
- 診察費用 4,400円+薬代1箱分 4,400円=8,800円
- 再診(1箱の場合)
- 診察費用 2,200円+薬代1箱分 4,400円=6,600円
- 再診(2箱の場合)
- 診察費用 2,200円+薬代2箱分 8,800円=11,000円
- 再診(3箱の場合)
- 診察費用 2,200円+薬代3箱分 13,200円=15,400円
※患者さまのご都合により、2回目以降は90日分(3箱)まで処方も可能です。
なお、検査期間が6ヶ月以上開いた場合は初回診察料(4,400円)がかかりますのでご注意下さい。
マイオピン点眼(低濃度アトロピン点眼薬)【国内未承認薬】
低濃度アトロピン点眼薬とは
小児期の近視の進行を軽減させることを目的に低濃度のアトロピン(0.01%、0.025%)を配合させた点眼薬です。
従来のアトロピン0.1%点眼液は強力な消炎作用と眼軸進展抑制効果があり、主にぶどう膜炎の治療に用いられてきました。副作用として結膜炎と眼瞼炎、血圧上昇や頻脈、消化器抑制による嘔吐などがありましたが、濃度を薄くして、副作用をできるだけ抑えた点眼薬として、シンガポール国立眼科センターの研究に基づいて開発されました。
成長とともに眼軸長が伸び(眼球の長さが伸びる)、ピントがずれることで近視になるのですが、低濃度アトロピン点眼薬は眼軸長を伸展させる働きを抑制すると言われています。
治療法・効果
毎日就寝前に1 滴点眼するだけの簡単な治療法です。
近視の進行が完全に止まるわけではありませんが、少なくとも2年間継続して使用することで何もしない方と比べ近視の進行を軽減できたという報告があります。
≫ 低濃度アトロピン点眼薬治療をおこなった際の点眼開始からの期間と近視の進行比較
- 【参考文献】
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- 小児近視治療用アトロピンについて、アトロピン0.5%、0.1%、及び0.01%を点眼した場合の安全性及び効能(進行度2の近視治療にアトロピンを使用した場合)
Audrey Chia, FRANZCO,1,2 Wei-Han Chua, FRCSEd(Ophth), FAMS,1,2 Yin-Bun Cheung, PhD,3,4 Wan-Ling Wong, Mbiostat,2 Anushia Lingham, SRN,4 Allan Fong, FRCSEd(Ophth),1,2 Donald Tan, FRCS, FRCOphth1,2,5 - 近視進行用低濃度アトロピン(LAMP)に関する2年間の臨床試験
Jason C. Yam、FCOphthHK、FRCS(Edin)、1、2、3 Fen Fen Li、MMed、1 Xiujuan Zhang、PhD、1 Shu Min Tang、PhD、1、4 Benjamin H.K. Yip、PhD、5 Ka Wai Kam、FCOphthHK、FHKAM (Ophthalmology)、1、3
Simon T. Ko、FCOphthHK、FHKAM (Ophthalmology)、6 Alvin L. Young、FRCSI、1、3
Clement C. Tham、FCOphthHK、FRCOphth、1、2、3 Li Jia Chen、FCOphthHK、PhD、1、3 Chi Pui Pang、Dphil1
- 小児近視治療用アトロピンについて、アトロピン0.5%、0.1%、及び0.01%を点眼した場合の安全性及び効能(進行度2の近視治療にアトロピンを使用した場合)
リスクと副作用
- まれに結膜炎や眼瞼炎が起こる可能性があります。
- 瞳孔が開くことによって眩しさを感じる場合があります。
(0.025% 製剤は0.01% 製剤よりもまぶしさを感じやすくなる場合があります。)
点眼薬代+検査料
- マイオピン0.01%点眼薬(1本)
- 5,500円(税込)
- マイオピン0.025%点眼薬(1本)
- 6,875円(税込)
※マイオピン点眼薬(1本)は一日一回点眼使用で約2カ月持ちます。
- マイオピン0.025%終売のお知らせ
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当科では近視進行抑制の目薬として、マイオピン0.01%、マイオピン0.025%をシンガポールから輸入して使用して参りましたが、参天製薬が2025年4月より、「リジュセアミニ」点眼を発売することになり、マイオピン0.025%の輸入が不可能になりました。
安全に使える良いお薬でしたが、今後は「リジュセアミニ」点眼をご利用いただくよう、よろしくお願いします。なお、マイオピン0.01%は、今まで通り処方を継続します。
レンズによる近視進行抑制
オルソケラトロジー
オルソケラトロジーは就眠時に特殊なコンタクトレンズを装用し、寝ている間に角膜形状を矯正して近視を補正する方法です。効果を維持するためには毎晩装用することが必要です。角膜形状の変化は主に角膜上皮細胞層の厚みの変化にとどまりますが、角膜上皮細胞は基底層からどんどん新しい細胞が作られて、7~10日間程度で表面に出て生まれ変わるため、装用を中止すると2週間~1ヶ月程度で元の状態に戻ります。
通常の眼鏡やコンタクトレンズと異なり、軸外収差が近視側(低矯正)になることにより通常の眼鏡やコンタクトレンズに比べて近視進行の抑制効果があることが知られています。当院では9才以上の方に処方しています。軽度~中等度までの近視の方に適した治療方法です。
当院のオルソケラトロジーについて、詳しくはオルソケラトロジーのページをご確認ください。
多焦点コンタクトレンズでの近視進行抑制
近見用の加入度数により、周辺部の結像を低矯正にして近視進行抑制を狙う
多焦点ソフトコンタクトレンズは、一般的に老眼になったシニア世代向けの遠近両用コンタクトレンズとして販売されています。 海外では子どもの近視進行抑制の目的とする多焦点コンタクトレンズが開発されており、一部の製品においてその有効性が示され、米国FDAや欧州CEマークの認可を取得しています。
オルソケラトロジー治療と同様に、周辺部の結像が近視側(低矯正)になることで近視の進行抑制に有効とされています。通常のレンズに比べてレンズの性質上、暗所での光のにじみ、像のボケなどを感じやすくなります。国内で流通しているレンズを代用する場合は、一般のコンタクトレンズ診療と同じ手順での処方が可能です。いずれのコンタクトレンズでも、自分でつけはずしや管理が可能になる年齢以降の装用開始がのぞましいとされています。
海外で近視進行抑制用として認可を受けているレンズ | Misihgt® NaturalVue® BloomDay® MYLO® ※いずれも日本未発売 2023年1月現在 |
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日本国内で近視進行抑制用として 代替されている主なレンズ |
2Week MeniconDuo® SEED 1dayPure™EDOF Biofinity®multifocal ※2025年1月現在 |
適応
軽度~強度近視(近視抑制点眼との併用が望ましい)